こんにちは。

熱海であった高円寺OB会で、猪越先生の講義がありました。猪越先生は高円寺塾の先生です。そして、ボクも先生の「東西薬局」で2年ほど働かせていただきました。中医学に対しての大恩人です。

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テーマは「掌蹠膿胞症と過敏性大腸炎の関係性について」。仰々しいタイトルですが、このタイトルで「中医臨床」に投稿されたものを、ボクたちにお話しして下さいました。

中医学では「肺」と「大腸」を裏と表と考えます。つまり、「臓である肺」と「腑である大腸」には密接な関係があると言われています。

この中医学の考えをもとに「掌蹠膿疱症」と「過敏性大腸炎」の関係性について考えられ、これをもとに実際に改善されているそうです。共通としては、どちらも免疫錯乱…と考えられます。

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猪越先生は「皮膚の病気は内臓でなおす」という本を書かれています。

「掌蹠膿胞症」は手のひらと足の裏に直径5mmくらいの水疱ができる皮膚病です。自分の白血球が、自分の角質を敵だと思って攻撃するそうです。

先生が初めて「掌蹠膿胞症」の患者さんの相談を受けたのは20年前…なんだそうです。

皮膚を考える上で、五臓で考えた場合、「肝・心・脾・肺・腎」すべてつながっていますが、一番は「肺」だと考えました。中医学では、「肺」は皮膚を含む呼吸器系を指します。実際、皮膚呼吸があるので…「肺」と考えられたそうです。

皮膚呼吸の定義は「酸素分圧の違いにより、皮膚を通して酸素が移動すること」だそうです。

実際、皮膚呼吸を調べてみると、ヒトの皮膚呼吸は全体の0.6%。全体の約1/200だそうです。でも0ではない…ということです。

中医学では相生関係として、「肺」を養う臓器は「脾」(消化器系)です。

慢性化すると「腎」(免疫・ホルモン系)に影響が出ます。「腎は髄を生じ骨を司る」という考えがあります。つまり、骨髄は腎。腎が上手くはたらいていない…ということになります。

「掌蹠膿疱症」の出る部位は角質化した皮膚。「掌蹠膿疱症」は骨もやられます。「掌蹠膿疱症」の権威で、秋田県本荘第一病院の前橋賢先生によると「鎖骨」「胸骨」「肋骨」など皮膚由来の骨に影響が出るそうです。四肢の骨は筋肉由来なんだそうです。

先生はホルモン系の失調は「腎虚(じんきょ)」と考えられ、それに「肺」由来の骨だけ症状が出る…ことに対し、「掌蹠膿疱症」は「肺」と「腎」の問題だと確信されたそうです。

根本的な治療として「肺腎」を補う「八仙丸(はっせんがん)」がベースになるとのこと。ただ、対症療法としては「三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)」などの漢方薬で治療されています。

また、「肺」と「大腸」は裏表なので、根本的な治療として先生は「過敏性大腸炎」に関しても「八仙丸」をつかわれているそうです。対症療法には「三物黄芩湯」に加え、大腸・直腸の炎症を抑える「槐角丸(かいかくがん)」などの漢方薬で症状が安定してきているそうです。

先生は、とにかく「考える中医学」をしてください…とボクたちに繰り返しおっしゃられていました。カルタ合せの治療ではダメですよ…とも言われました。ボクたちも肝に銘じなければならないことです。

猪越先生、ありがとうございました。