こんにちは。
中医皮膚病では、病名から中成薬(中国漢方)を選択するのではなく、病邪の性質を見て選択します。
病邪のタイプと皮膚症状
タイプと皮膚症状の特徴として、
- 湿熱:水疱、びらん、滲出性紅斑、滲出性丘疹、湿潤性痂皮
- 熱毒:膿疱、紅皮症、大疱、潰瘍など
- 血熱:紅斑、深紅斑、紫斑、紅斑を伴う丘疹、水疱など
- 風熱:赤い膨疹、症状が出たり消えたり変化が激しいものなど
- 温燥:鱗屑、亀裂、苔癬化など
- 瘀血:紫斑、紫色の結節、腫瘤、苔癬化、色素斑など
- 痰湿:皮色の腫瘤、結節など
- 風寒:白い膨疹など
そして、よく見られる急性段階の皮膚病は、概ね「湿熱」「血熱」「熱毒」の3つのパターンに分類されることが多いです。
赤い(深紅)の「血熱」、丘疹(隆起)の「湿熱」、炎症(勢い)の「熱毒」の病邪から、病邪の勢いを判断し、最初は勢いを止めるため、何種類かを合わせて服用していただくことがあります。
尋常性乾癬、ジベル薔薇色粃糠疹、アトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症、脂漏性湿疹…など、病名から処方を選択するわけではないですし、病邪の勢いによっても違ってきます。
また、 「急則治標、緩則治本」の治療方針により、急性症状があるときは、まず急性症状を収束させることに専念し、亜急性期に入ってから徐々に本治(補剤)切り替えていく対応になります。
病邪の性質で判断
先日も、半年前から掌(てのひら)に発疹が出始め、それが拡がり悪化したため、1ヶ月前に皮膚科を受診された男性が来られました。病院では「乾癬」と診断され、ステロイド外用剤が処方されていたようですが、改善が見られなかったのか、ウチの薬局にいらっしゃいました。
初診のとき、皮膚症状は掌(てのひら)と蹠(あしうら)に出ていて、掌(てのひら)は真っ赤。手の皮も厚くなっていて、所々皮がめくれた状態ですが、水がしみるという感覚はなし。見るからに「熱」の勢いが強い状態でした。その他、手首、手の甲にも一部出ている状態です。原因は分からないけれど、そのころ、膀胱炎を繰り返し発症し、抗生物質を繰り返し服用されていたのだとか。
掌(てのひら)と蹠(あしうら) に集中していたり、皮膚症状から「掌蹠膿疱症」のようにも思えたのですが、病院では「乾癬」という診断でしたが、中医皮膚病では病名は参考としますが、タイプを見極めることが重要であると考えます。
今回、ボクは「血熱」「熱毒」のタイプであると判断し、それに対し中成薬(中国漢方)を服用していただきました。加えて、痛いというわけでないため、角質を軟らかくする目的で「華陀膏」、そして「乾癬」は刺激で悪化するので、保護の目的でクリームを外用として。
2週間後に来られたとき、皮膚症状は劇的に改善していて、掌(てのひら)の赤みだけ見ると、初診のときを「10」としたら、2診目が「1~2」。一瞬、普通の人の 掌(てのひら) かと錯覚する程です。手の皮がキレイにむけたのだとか。
治療50%、患者50%
実際、ご本人が漢方の効果に驚かれていましたが、ボクも驚きました。漢方が効いたのは間違いないですが、ご相談いただいたお客様の姿勢もあると思います。 「治療50%、患者50%」と言われるように、治療の段取りを経て、症状が良くなっても、最終的に自分の皮膚を管理できるのは本人だからです。
確かに、ウチの薬局に来られる方は、病院に何年もかかっていて改善が見られない方が殆どです。今回の場合は、発症から半年ですが、病院の治療は1ヶ月なので、漢方の治療が2週間だとしても劇的な改善につながったのかな…と思います。
こればっかりは「縁」なのですが、ボクが言いたいのは、「皮膚病でも漢方は有効です」ということです。