こんにちは。
皮膚はその「バリア機能」と「水分保持能」で、体の恒常性を保っていて、その潤いは、表皮の一番上にある「角質層」の状態と関係しています。
「角質層」は保湿物質が水分を保持するとともに、外部から刺激や異物が侵入するのを防ぐバリアの役目も果たしています。
健康な「角質層」には約20%を占める水分が含まれていて、その水分は皮膚がつくり出すセラミドなどの保湿物質によって保持されていますが、加齢とともに保湿物質をつくる力が弱まってくると、水分が蒸発しやすくなります。特に湿度が下がり空気が乾燥する冬は、皮膚から奪われる水分量が増加、皮脂膜もつくられにくくなります。
皮膚の潤いを保つ保湿物質の中で、大きな役割を果たしているセラミドは皮膚の新陳代謝の過程でつくられます。最も生産量が多いのは乳児の頃で、それ以降、セラミドの生産量はどんどん減少傾向に…。このため、ボクたちの皮膚は高齢になるほど水分を保つ力が弱まり、「乾燥肌」になりやすくなります。
乾燥が進めば、お肌のバリア機能は低下し、痒みを伴う皮膚疾患にもつながります。特に、アトピー性皮膚炎の人の皮膚は正常な人の皮膚に比べ、「皮脂膜を作る力が足りない」ことと、「皮膚内の水分保持能力が低い」ことでアレルゲンや微生物が容易に侵入し、さらには「過敏な体質」と併せてアレルギー反応を起こしますので悪化しやすい時期でもあります。
本治(根本治療)には、漢方薬などで体の潤い不足を改善する「内服治療」による美肌作り、再発防止が必要だと考えますが、スキンケアにより皮膚のバリア機能を高めてあげることで、効果がより高まります。スキンケアは「仮の柱」にはなりますが、直接皮膚を守ることから、効果を早く感じることができます。そのため皮膚が乾燥しやすい冬は、しっかりと保湿することが大切です。
それでは何を塗るのか?ローションやクリームがありますが、それぞれモイスチャライザー効果、エモリエント効果が期待できると思っています。
エモリエント:皮膚表面を覆って水分の蒸発を防ぐこと。体内から蒸発する水分が角質内に貯留し、皮膚の潤いと柔軟さをもたらす。
モイスチャライザー:水分を引き寄せ保持する保湿剤を含み、皮膚に塗布した直後から角質水分量の増加をもたらす。
エモリエントとモイスチャライザーを比較した研究によると、モイスチャライザーの方がより「TEWL(経皮水分喪失)」、つまり「一定時間で角質から失われる水分」を低下させる傾向にあるのだそうです。
ローションはモイスチャライザーの役割で、NMF(天然保湿因子)とセラミド(細胞間脂質)、クリームはエモリエントの役割で皮脂膜の代わりですが、モイスチャライザーとして考えることもできます。ローションを角質層へ浸透させ、クリームでフタをする。モイスチャライザーとエモリエント、この2つを合わせることで、より効果が増すと考えます。
また、保湿剤を塗る回数と量について。保湿剤の単回塗布では、「塗布量の多い方が効果は高い」が、連日塗布した場合では、塗布量を変えても保湿効果に有意な差はなく、「1日1回よりも2回の方が皮膚の角質水分量が優位に高かった」という報告があります。小まめなスキンケアを心がけて下さい。
寒い日は熱いお風呂が気持ちがいいですが、38~40℃のぬるめのお湯で、長湯をしないこと。角質層から皮脂などが溶け出しやすくなるからと、体が温まることで痒みが増すからです。そして、入浴時の洗い過ぎやナイロンタオルによるこすり過ぎにも注意が必要です。