こんにちは。

先日の山口中医薬研究会での韓(はん)先生のお話…。

「補腎」の意義は「病死」を避け、自然寿命を目標とする…というものでした。

「病死」の死亡率1位の悪性新生物の部位死亡率、男性は上から肺、胃、大腸、肝臓、女性は上から大腸、肺、胃、乳房、肝臓、子宮…。男女共通で考えると「胃、大腸、肝臓=消化器系」「肺=呼吸器系」と考えることができます。

「消化器系」を考えたときに、薬を飲む前にまず「食養生」が大事であると先生はおっしゃいます。「消化器系」で考えると、食事の不摂生、加齢に伴い失われる大事な「腎精(じんせい)」の不足…胆汁や膵液の不足に注目されます。この2つを助けるため、食事に気を付け、消化酵素を含めた「腎精」を補うことが必要になるわけです。

一方で「呼吸器系」を考えると、肺ガンは女性にも多いことから、単にタバコ🚬だけの問題ではない…と考えられます。

「消化器系」も「呼吸器系」も、言ってみれば外界に接している「内なる外」。まず気を付けなければならないことは「カゼに罹らないこと」…つまり感染症の予防です。

「呼吸器系」で特に大事なのは「肺胞」の組織、破壊されると再生が出来ません。「肺胞」を大事にする必要があります。

「腸内細菌、腸内細菌」と最近よく話題になっていますが、もともとボクたちの体には腸以外にも菌がいます。口の中に800種類、鼻の中に900種類…共生しているわけです。誰でも呼吸と一緒に気管支に菌やウイルスを常に取り込んでいるわけで、健康な人でも140種類の菌やウイルスをもっているそうです。

それでも病気にならないのは、「粘膜免疫」がしっかりと働いてくれるお陰…。「粘膜免疫」が弱いから、カゼを引き、引いたら治りにくい。

中医学では「粘膜免疫=衛気(えき)」の力と考えますが、漢方で「衛気」の働きを助けてあげることが有効であると考えます。

カゼが治らなくて、病院で「びまん性汎細気管支炎」と診断され、抗生物質とステロイド吸入剤、気管支拡張薬が9年間に渡り処方され続けていた方…。逆に体調を崩され、酸素吸入が離せない状態となり、韓先生に相談に来られたそうです。9年前にカゼを引いたときは、強い菌、強いウイルスによるものではなく、体が治す力が落ちていたと考えられます。韓先生は、そのときに「補腎薬」を飲んでいたらここまで長引くことはなかったハズ…とおっしゃいます。

抗生物質の使用は大体1週間程度…。抗生物質を9年間使用され、吸入ステロイドで免疫が抑制され、結果として菌のバランスが崩れて、抗生物質の効かない菌が増えてくる…とのこと。普段は弱い真菌や非結核性抗酸菌、MAC菌など、昔聞いたこともないような菌が出てくるのは、それが原因の1つのような気がします。

確かに、吸入ステロイドは予防として処方されることが多いですが、逆に「衛気」がダメになり、慢性の炎症を起こしてしまう…。必要な方もいらっしゃるので勝手に止めることは良くないですが、症状が出ていないのであれば医師と相談することも大事だ…と先生はおっしゃいます。

「肺胞」を大事にすること、粘膜を潤し修復させる「補腎薬」のお話をされました。そして皮脂膜が潤っていないと粘膜の水分が蒸発し、皮膚ならアトピー性皮膚炎、慢性湿疹、気管支だと慢性気管支炎、鼻の粘膜弱いと慢性鼻炎など、色々な慢性炎症が起こる…ということでした。

ボクはこの話を聴いたときに、アトピー性皮膚炎とステロイド外用剤のことを思い出しました。

確かにステロイドを使用していると炎症は収まります。ただ、抑えているだけで止めるとリバウンドを起こしてしまう場合があります。炎症は消えてないわけです。

ステロイドを長期に使用していると皮膚が薄くなり、感染症に罹るリスクも高くなります。ステロイド外用剤を長期に使用している場合、漢方薬で改善するまでの時間は長くかかる場合が多いです。今は、スキンケア(潤い)を行いながら、炎症のある場所にはステロイド外用剤を使用する…という方法が一般的だと思います。そして、炎症の酷さ、使用する部位によって使用するステロイドのランクが細かく決まっています。

アトピーのベースには「ドライスキンとバリア機能の破綻」があることから、ステロイド、ステロイド…と長期に使用し続けることは、結果的にアトピー性皮膚炎を長引かせることにつながると思います。「ステロイド外用剤の予防塗り」も問題視されています。

皮膚、肺、気管支…中医学では同じ「肺」に属します。肺、気管支に置き換えて考えてみると、ステロイド吸入を長期使用することが必ずしも万人に有効なのだろうか…という考えが浮かんできました。それよりも、粘膜バリアを強化し、粘膜の潤いを保つことが根本的な治療ではないのか…と。粘膜がしっかりしていると、カゼの予防、アレルギーの予防にもつながるからです。

西洋医学は真正面から病気と戦うのですが、結果として体が弱ってしまう…。中医学で命を守る「補腎」で体質改善を…という考え方を教えていただきました。

韓先生、ありがとうございました。