こんにちは。
この日曜日、「ふるさと伝承センター」にて山口中医薬研究会の勉強会がありました。
今回の講師は韓(はん)先生で、「補腎の意義と補腎薬の使い方」と題したお話でした。
厚生労働省の「2015年の人口動態統計」によると、2015年の日本人の死亡数は129万428人で、そのうち75歳以上の高齢者の死亡数は全体の7割を超えているそうです。
主な死因は、上位から悪性新生物(28.7%)、心疾患(15.2%)、肺炎(9.4%)、脳血管疾患(8.7%)で、5番目が老衰(6.6%)…と続きます。
死を考えたときに、「病死」と「老死」があるわけですが、悪性新生物(ガン)、心疾患、肺炎、脳血管疾患を「病死」、老衰を「老死」と考えられます。
韓先生の考える「補腎」の意味は、「病死」を避ける、そして自然寿命を目標とする…というものです。
「病死」の1位である悪性新生物の死亡数の年次推移を見ていても、医療が進歩しているのに、ガンは減らないどころか増えている…。実に「3.5人に1人」がガンで死亡する時代です。
悪性新生物の部位死亡率、男性は上から肺、胃、大腸、肝臓、女性は上から大腸、肺、胃、乳房、肝臓、子宮…の場所が多いとのこと。
男女共通で考えると「胃、大腸、肝臓=消化器系」「肺=呼吸器系」、そして女性は「乳房、子宮=生殖器」とグループに分けて考えることができるわけです。
ボクたちは生きていくために「食べなければならない」「呼吸しなければならない」わけですが、「消化器系」の場合は薬を飲む前にまず「食養生」と韓先生はおっしゃいます。
「長生きしたいから補腎薬を飲みたい…」ということ以前のこと。食事を疎かにしてしまうと、消化器系のガン以外にも、血管の障害、脳の障害を引き起こしてしまう可能性がある…ということ。
ただ食事に気を付けていても、体質的に胃腸虚弱、加齢に伴う胃腸機能の低下…ということもあります。特に、加齢により「胆汁」と「膵液」が低下していきます。「膵液」は内分泌のインスリン、外分泌の消化酵素が体の中を循環しています。
肝臓から分泌する「胆汁」も、膵臓から分泌する「膵液」も、韓先生は「腎精(じんせい)」と捉えて考えるべき…とおっしゃいます。一般的に「腎精」と言うと、生殖を司る「性ホルモン」や、成長発育を司る「成長ホルモン」だけを考えがちですが、生命活動を支えている大事な消化液、消化酵素も全部「腎精」であると…。
中医学の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」の中にも、肝臓の老化は50歳から始まると書いてあるそうですが、老化により肝臓は萎縮していくそうです。それにより「胆汁」の分泌が減り、食べられない、お酒の量が減る…ということになるわけで、「腎精不足」ということになります。
そう考えると胃腸の力が「腎精」で、血糖値が上がりやすくなった…というのは「腎精不足」という考え方です。
韓先生のお話を聴いて、「腎精」が「性ホルモン」だけではなく、生命活動を支えている大事な消化液、消化酵素も含めて「腎精」であり、大事に使わなければならないもの…。なのに、好きなものを食べる…などの食事の不摂生は消化器系のガンにつながる…ということでした。
「補腎薬」と言うと、「六味地黄丸」系統のようなものを考えてしまいますが、消化酵素の分泌を高めるような胃腸系の漢方薬も「補腎」として捉えることができるわけです。
必ず「食養生」がベースとなるのですが、そこに「補腎薬」を足してあげることで、「病死」を避ける、そして自然寿命を目指して行くわけです。これは中医学の「未病を防ぐ」ということにつながる考え方だと思います。
韓先生のお話は、ボクにとって新しい発見でした。ありがとうございました。