こんにちは。
漢方薬の名前は西洋薬に比べて堅苦しい感じがしますし覚えにくいですよね。
カタカナやアルファベットなどとは違って、漢字は1文字1文字に意味があります。漢方薬の名前にもすべて意味があり、中医学の考え方が反映されています。
その名前込められた由来を知れば、漢方薬が身近な存在になると思います。知らない感じの羅列のような薬の名前が、息づいて来るように感じられるかもしれません。
法則其の一…生薬名に由来
漢方薬の多くは2~10種類くらいを組み合わせて使用します。漢方薬のうち、名前の由来が分かりやすいのは、その中でも重要な生薬(主薬、君薬)の名前が付いたものです。有名な「葛根湯」(葛根)はその1つ。
漢方薬の名前は1、2種類の生薬を組み合わせた名前が多く、2種類では「当帰芍薬散」(当帰・芍薬)、「杞菊地黄丸」(枸杞子・菊花)などがあります。
欲張ってすべての生薬の名前を入れた漢方薬も…。「麦味参顆粒」(麦門冬・五味子・人参)は3種類、「麻杏甘石湯」(麻黄・杏仁・甘草・石膏)や「苓桂朮甘湯」(茯苓・桂枝・白朮・甘草)は4種類…中には「苓甘姜味辛夏仁湯」(茯苓・甘草・乾姜・五味子・細辛・半夏・杏仁)の7種類のものまでも…。
法則其の二…生薬の数に由来
配合した主な生薬の数を名前にしているものもあります。
有名なものとして「六君子湯」があります。胃腸の弱い人などに使われる漢方薬ですが、「君子のように性質が穏やかな6つの生薬」という意味があります。
「四物湯」は4種類、「五涼華」は5種類、「八味地黄丸」は8種類、「十全大補湯」は10種類の生薬で構成されています。
法則其の三…効能を表している
効能を表した名前もよくあります。漢方薬の種類が増えて医学の理論を重んじるようになったなどが根底にあるようです。
有名なものに「逍遥散」や「温胆湯」などがあります。「逍遥散」の逍遥とは「リラックスする」という意味なので、「逍遥散」はストレスに負けないための漢方薬。更年期障害などによく使われる「加味逍遥散」は、「逍遥散」に熱を取る生薬が加えられたことから「加味」という名前が付きます。
「胆を冷やす…」という言葉があるように、不安感や恐怖感、驚き、迷い…といった精神状態のことを、中医学では「胆寒(たんかん)」と言います。「温胆湯」はこの「胆を温める=改善する」…という意味の漢方薬です。
法則其の四…生薬と効能に由来
生薬と漢方薬の効能を組み合わせた名前のものも…。
たとえば「帰脾湯」。「帰」には主薬である「当帰」のほか、「帰着する」という意味も込められています。「帰脾」とは「色々な症状はあるがその責任は脾(消化器)にある」という意味になります。「帰脾湯」は「当帰」を利用して、根本的な病態である消化能力の低下を改善する漢方薬です。
「参茸補血丸」も「人参」と「鹿茸」を利用しながら、「血」を補う漢方薬です。
法則其の五…四神に由来
変わったところでは、四神に由来する漢方薬も…。四神とは青竜(せいりゅう)、白虎(びゃっこ)、朱雀(すざく)、玄武(げんぶ)。東西南北をつかさどり、季節をもたらす神獣です。
東の神である青竜は、春をもたらし、水をつかさどる神です。その青竜に由来するのが「小青竜湯」。「体内に冷たい水があるような状態を、春の暖かさで治す」という意味で、肺を温め水のような鼻汁によく効くので、花粉症に使われたりします。
西の神である白虎は、秋をもたらします。「白虎湯」には、「夏にほてった体を秋の涼しさで冷ます」という意味で、皮膚病でも使うことがあります。「白虎湯」に使われている「石膏」の白色も、名前に含まれているようです。
北の神である玄武は、冬をもたらします。「真武湯」はこの神にちなんだ漢方薬です。体に水が溜まり、冷えている状態を治します。
法則其の六…病態を表す
あまり多くはないですが、病態をあらわしたものも…。
たとえば「四逆散」は、4種類の生薬で構成されていて、「逆」とは体内の気が巡らず、停滞した状態。「四逆散」は胸や腹部の張り、痛み、手足の冷えなどに使います。
その他に、「湯」は煎じた液体、「丸」は漢方薬の粉末を丸く固めたもの、「散」は粉末にした漢方薬をそのまま…という意味。
漢方薬の名前の法則を知っていただくと、中医学の奥深さを実感できると思います。