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中医学の中では、「気」「血」「津液(水)」は健康を支える3本柱と考えます。この3つが充実してスムーズにめぐれば、人は健康状態を保てますが、不足したり、めぐりが滞ったりすれば、人は健康の枠から外れていきます。中医学的に、自分の体質を把握してみてください。

その中で「津液(水)」とは、血液以外の水分およびその機能をさします。この水分が不足することを「陰虚」と呼びます。

「陰虚」になると、体の潤いが無くなっていきます。体の潤いが足りないと、肌がカサカサし、空セキが出たり、目が乾燥したり、口やのどが乾き、便がコロコロして硬いなどの症状が表れてきます。いわゆる、ドライシンドローム(ドライアイ、ドライマウス、ドライスキン、ドライバジャイナなど)がこれに当たります。

とくに、これから秋から冬にかけては乾燥の時期。その症状が強くあらわれやすくなります。

また、人間は「水冷式のエンジン」によく例えられます。水が足りなくなると、体の陰陽のバランスが崩れて、相対的に熱があらわれることがあります。車に例えると、オーバーヒートした状態です。そういう人の舌の状態は、舌の色が赤くて、ときに「裂紋(れつもん)」と言われる舌の表面の裂け目があり、苔は少ないかほとんどないです。

この「陰虚」を改善する代表的な生薬に「麦門冬(ばくもんどう)」があります。

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日本ではユリ根を食べる習慣がありますが、これも立派な漢方薬です。同じユリ科の植物である「麦門冬」は潤いを補うはたらきにすぐれていることから、中医学では水分の不足した状態を改善させる場合、よくつかわれている生薬です。

「麦門冬」は現代医学では解熱・消炎・抗菌・鎮咳・去痰・利尿・強心・強壮などのはたらきがあるとされています。

中医学では、肺や胃を潤すはたらきがあると考えていて、カラ咳が出たり、口が渇いて食べたものが胸につかる…といった場合に使われます。

この他にも、夏の暑いときに多量の汗をかくと、頻脈・血圧低下などのショック症状や、虚脱の症状があらわれることもあります。

このような場合には、エネルギーを補う「人参(にんじん)」と、体を引き締め発汗を抑える「五味子(ごみし)」などと合わせることで、暑気あたりや暑さ負けを予防・改善することができます。この3味(3種類)の生薬が入っている漢方薬に「麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)」があります。

その他、この「麦門冬」の入っている漢方薬には、「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」「潤肺糖漿(じゅんぱいとうしょう)」「八仙丸(はっせんがん)」などがあります。