こんにちは。
寝つきが悪く、寝苦しい日がまだ続きますね。
中医学では、精神を安定させる作用をもつ生薬を「安神薬(あんじんやく)」と呼び、鉱物など質量の重いものを「重鎮安神(じゅうちんあんじん)」、植物の果実や根などを「滋養安神(じようあんじん)」と分類します。
心身不安(精神不安定)のあらわれ方は多様で、その原因も様々です。
驚き、恐れ、憂鬱、精神ストレスなどによって生じるイライラ、興奮のタイプに対しては、沈める性質をもった「重鎮安神」の生薬で、高ぶった神経を鎮め、気持ちの安定を図ります。上から押さつける…といったイメージです。
また、不安感が強い、動悸、不眠、疲れやすいなどの虚弱なタイプに対しては、「滋養安神」の生薬で、よい睡眠を導き、心身の疲れを取っていきます。
「重鎮安神薬」の生薬には「竜骨(りゅうこつ)」「牡蠣(ぼれい)」「琥珀(こはく)」「珍珠母(ちんじゅも)」などがあります。
竜骨
「竜骨」は古代のほ乳類の化石で、古くは不老不死の薬として皇帝にもけんじょうされたこともあります。また、有名な甲骨文字は「竜骨」に刻まれたものから偶然発見されたもののようです。普段からのぼせやすく、めまい、頭痛がよく起き、興奮して眠れないことが多いなどの症状を伴う場合に効果があります。
牡蠣
「牡蠣」は「海のミルク」とも呼ばれるくらい栄養豊富なカキの殻です。漢方薬としては、その身よりも殻の方がよく使われます。「牡蠣」には高ぶった気を鎮めるだけでなく、熱によって消耗した潤いを補い、肝の機能を調節して震えを軽減するはたらきがあります。
琥珀
「琥珀」は松や楓などから分泌される樹脂が地中で化石化したもので、宝石や装飾品として利用される美しいものがあることでも知られています。古代ギリシャやヨーロッパでは「太陽の石」「人魚の涙」と呼ばれ、貴重な厄除けの貴石としても様々な伝説があるそうです。
清朝・西太后(せいたいごう)の抑うつ症状改善のために、琥珀の入った「交感丸(こうかんがん)」という薬が使われたことが、宮廷のカルテにも記載されています。
珍珠母
「珍珠母」は真珠の母貝である真珠貝の真珠層部分です。美白効果と安神作用のある「宝石生薬」です。
「竜骨」「牡蠣」の入った漢方薬に「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」「桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」などがあります。
「琥珀」「珍珠母」の入った漢方薬に「ミンハオ」があります。
一方、「滋養安神薬」の生薬には「酸棗仁(さんそうにん)」「遠志(おんじ)」などがあります。
酸棗仁
主に不眠症の治療によく使われます。不眠症にも色々なタイプがありますが、心身が疲れて寝つきが悪く、眠ったとしてもすぐに目を覚ましてしまったり、眠りが浅く夢をよく見るようなタイプの不眠に適しています。このほか、潤いを補う、発汗を抑えるなどのはたらきもあるので、動悸、不安、寝汗をかく、便が乾燥して便秘になりやすい…という場合にも使います。
遠志
「遠志」には、驚きやすい、動悸、不安、不眠それに意識混迷などの状況を改善し、「遠く(久しく)志を持ち続けることが出来る…」という精神安定作用があります。「遠志」の名前の由来は、効能効果がそのまま名前になった…と言われています。中国の医学書には、「不足を補い、邪気を除き…知恵を増し、忘れず、志を強め、力を倍増する」とあります。
「酸棗仁」の入った漢方薬に「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」「温胆湯(うんたんとう)」などがあります。
「酸棗仁」「遠志」の入った漢方薬に「天王補心丹(てんのうほしんたん)」「帰脾湯(きひとう)」があります。
安定した情緒、良質な睡眠は自然治癒力と免疫力を高めることができ。子どもの成長や女性の美容に良いものです。