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中医学では、「腎」を生命エネルギーをつかさどるもの、精力の精にもつながり、ホルモンと密接な関係があるとしています。それを補うものを「補腎薬(ほじんやく)」と言います。

ひと言で言えば、「補腎薬」とは「漢方のホルモン剤」のようなものでしょうか…。

そんな「補腎薬」の代表方剤に、「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」があります。

もともと「六味地黄丸」は、小児科の銭乙(せんいつ)という人が、今から900年以上前に作った処方です。だから、もともとは子どもの薬です。

主に先天的な虚弱体質による発育不良を治療する方剤として使われていました。たとえば、大泉門の閉じるのが遅い、歯がなかなか生えない、またはクル病を含む骨格の発育不良などです。

「六味地黄丸」は「熟地黄(じゅくじおう)」「山茱萸(さんしゅゆ)」「山薬(さんやく)」「牡丹皮(ぼたんぴ)」「沢瀉(たくしゃ)」「茯苓(ぶくりょう)」の6つの生薬から出来ています。

「熟地黄」「山茱萸」「山薬」は足りないものを補強する「3つの補」で、「3補」と言います。

一方、「牡丹皮」「沢瀉」「茯苓」は余ったもの、または不必要なものを取り除く「3つの瀉」で、「3瀉」と言われます。「3補」と「3瀉」の併用」…という構造をしているので、長期の服用が可能になります。

こんな「六味地黄丸」をベースにし、さらに2種類の生薬を加えることで、新たな「補腎薬」が作られています。つまり、「六味地黄丸+α」の方剤がいくつかあります。

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「+α」の部分で、その方剤のベクトルが変わっていくんです。定食のセットの部分は変わらないけど、メインのおかずが違う…といった感じでしょうか。

「六味地黄丸」に、目にいい「枸杞子(くこし)」と「菊花(きくか)」の二味をプラスしたものが「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」。「杞菊地黄丸」は「飲む目薬」…と呼ばれています。目の疲れ、かすみ目、目が乾く、視力の衰え、頭痛、めまい、肩こり、怒りやすい…などの症状がある人におススメです。

「六味地黄丸」に、熱を取る「知母(ちも)」と「黄柏(おうばく)」の二味をプラスしたものが「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」「瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)」とも言います。ほおが赤い、のぼせ、熱感、寝汗をかく、手足がほてる…などの症状がある人にオススメです。

「六味地黄丸」に、潤いをつける「麦門冬(ばくもんどう)」と「五味子(ごみし)」の二味をプラスしたものが「八仙丸(はっせんがん)」。鼻炎、カラ咳、喘息、のぼせ、しっしん、かゆみ、アトピー性皮膚炎…などの症状がある人にオススメです。

「六味地黄丸」に、温める「炮附子(ほうぶし)」と「桂皮(けいひ)」の二味をプラスしたものが「八味地黄丸(はちみじおうがん)」「金匱腎気丸(きんきじんきがん)」とも言います。むくみやすい、頻尿(特に夜間頻尿)、顔面蒼白、寒がり、手足の冷え…などの症状がある人にオススメです。

「六味地黄丸+α」の「補腎薬」。自分に合った「補腎薬」を見つけてください。