こんにちは。
中医学では、食物の味を5種類に分け、「五味(ごみ)」と呼んでいます。
「五味」とは「甘(あまい)」「辛(からい)」「酸(すっぱい)」「苦(にがい)」「鹹(塩からい)」の5つです。
この「五味」は、人間の体の五臓六腑のはたらき深い関係にあるとされ、中医学ではとても重要視されています。
ちなみに、「甘=脾と胃」「辛=肺と大腸」「酸=肝と胆」「苦=心と小腸」「鹹=腎と膀胱」にそれぞれ作用し、適切に摂られると体の機能を高める…とされています。 ボクたちが、普段とは異なった味のものを食べたくなったり、逆に好きだった食べ物を食べたくなくなることがあります。
女性は妊娠すると、酸っぱいものを欲しがりますが、それは母体が胎児の老廃物まで処理しなければならなくなるため、酸っぱいものを食べることで肝臓のはたらきを良くし、老廃物の処理能力を高めようとするからです。
肝臓は、ストレスに影響されやすい器官です。酸味のある食べ物を好んで食べたくなったときは、何らかのストレス状態にあった…ということはありませんでしたか?
「五味」のはたらきとしては…
甘味…弛緩、中和作用。
全身の緊張が続いて疲れたとき、無性に甘いものを欲したりすることがあります。それは、甘いものの弛緩作用により、緊張をほぐしてくれる作用があることを体が知っていて、自然に要求するから…と言われています。 痛みは筋肉の緊張で起こることが多いようですが、甘いもので緊張を弛緩されると、痛みを緩和させます。
漢方薬の処方の中には、「甘草(かんぞう)」や「大棗(たいそう):ナツメ」の甘味を利用して、薬理作用で中和・解毒させるものがあります。
また、甘味には疲れとともに不足した「気」「血」を補うはたらきもあります。
辛味…発散と運行の作用。
例えば、シソ、ハッカ、コショウ、トウガラシ、ショウガ、ネギ、ニンニクなどの香辛料を食べると、体が熱くなり、汗をかきます。
これは、辛味で血液循環が良くなり、体が温まったからで、余分な熱を発散しようとして、汗が出て来たんです。
中医学では、悪寒や発熱、頭痛、筋肉や関節の痛み、鼻水、鼻づまり…など、いわゆるカゼの症状で、内臓の機能障害を伴わない症状のことを「表証(ひょうしょう)」と呼びます。これに対し、内臓の症候を伴う症状を「裏証(りしょう)」と呼びます。
「表証」には、ショウガやネギなどの辛味のあるものを使います。
酸味…収斂固渋作用(粘膜の表面にはたらいて、分泌を抑制)。
酸っぱい食物の代表とされる梅干し。見ただけでツバが出て来ますが、酸味のある食物には、体から出過ぎるものを収め、出渋らせる作用があるんですよ。
中医学で言う「肝」は、西洋医学の肝臓とは異なり、消化や解毒ばかりでなく、精神面にも大きく関与している…と考えます。酸味は「肝」にはたらいて精神をのびのびさせて、ストレスを解消し、体内の老廃物の処理を助けてくれます。
苦味…清熱、燥湿作用。
普段から暑がりで、とくに暑い夏には体がほてって仕方がない。いつも真っ赤な顔でイライラしている…。
こういう人は「熱証タイプ」で、ありあまる熱のせいで、このような振る舞いに出ると考えられます。苦味はこの余分な熱を冷まし、体のバランスをとってくれます。体の中の余分な水分を捨てるはたらきも…。
苦味の代表的な食物にゴーヤがあります。ゴーヤは「寒性」で、暑さによる体のほてりを冷まし、解毒の能力を高めてくれます。
また、日本人の食生活に欠かせない緑茶も「涼性」で、体の余分な熱を冷まし、新陳代謝を調節し、老廃物を排泄させます。飲んだ後頭がスッキリしたり、目の重たい感じが取れたり、尿の出が良くなったり…気付かないうちに薬理作用を発揮していたりしますよ。
鹹味…軟堅散結(なんけんさんけつ)作用。
体にできた硬いしこりを軟らかくし(軟堅)、散らす(散結)作用を言います。
昔から、昆布や海苔が腫れ物にいい…と言われるように、海産物にはビタミンやミネラルが豊富に含まれていますが、その味は鹹味です。
鹹味には、「瀉下(しゃげ)作用」もあります。
ただお分かりの通り、鹹味のものは、血圧の高い方は摂りすぎに注意が必要ですよ。
こんな感じで、「五味」にはそれぞれ味覚だけではなく、中医学から見た面白い効果があるんですよ。