こんにちは。
「薬食同源」あるいは「医食同源」という言葉を耳にした人は多いと思います。これは中国に古くから伝わる言葉で、「薬と食物は同じ源から発している」ことを意味しています。
もともと古来中国の薬物は生薬と呼ばれ、草根木皮をはじめ、地球上に自然に存在するものが全て、薬と言っていいくらい、多種多様あります。なので、食物であると同時に薬である例が多いです。
昔から、便秘になったら野菜を食べるよと良い…とか、寒気がするときにはくず湯にネギを刻んで入れて飲むといい…などと言われています。
中医学では、食物には薬に類似するはたらきがあり、人間の体の特徴と合わせることが、健康を守る秘訣…と考えます。
人間には、「太った人」「やせた人」「寒がりの人」「暑がりの人」「肌がカサつく人」「脂性の人」など、様々なタイプがあります。
これらを一般的に「体質」と呼んでいますが、中医学では「証(しょう)」と呼びます。
「証」はいくつかに分類されます。例えば、顔色が青白く、冷え性でいつも下痢気味の人は「寒証」。逆に、ほてり症で顔が赤っぽく、便秘気味の人は「熱証」といった具合です。
同じく、食物も人間の「証」と同じくいくつかのタイプに分かれます。その1つが「性(せい)」です。
体内に入って体を温める作用のある食べ物を「熱性」、逆に冷やす作用のある食べ物を「寒性」と言います。温めたり冷やしたりする作用は、その強弱で「熱性」「温性」「涼性」「寒性」と4つに分かれます。ただ、温めも冷やしもしない性質のものを「平性」と呼んでいます。
食物の「寒熱」を判断するのに、例えば「ハッカ」を口に含むと、スーッと爽やかな冷感を覚えます。一方、トウガラシやコショウを口に含むと、口の中ばかりでなく体中が熱くなり、胃の中までカーッとしてきます。でも、これは分かりやすい例です。
熱性の食物…ニッキ(シナモン)、ニンニク、マトン(羊肉)など。
温性の食物…カボチャ、もち米、ヤマイモ、栗、、クルミ、ネギ、ショウガ、ピーマン、サクランボ、桃、牛肉、鶏肉など。
これらの食べ物には、寒さや冷えなどの寒冷性の邪気のを追い出す作用、体の活動エネルギーの不足を補う作用、体の活動を抑制するシステムを開放する作用、エネルギー不足を補い、新陳代謝を活発にして興奮させる作用などがあります。
寒性の食物…ゴボウ、柿、スイカ、梨、カニなど。
涼性の食物…小麦、ソバ、豆腐、納豆、キュウリ、セロリ、大根、トマトなど。
これらの食べ物には、暑さによる熱性の邪気を取り除く作用、過度の機能亢進を鎮める作用、不足している体の成分を補い、相対的に発生している熱を冷ます作用、すなわち鎮痛作用や消炎作用があります。
平性の食物…うるち米、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ギンナン、ゴマ、キャベツ、ニンジン、インゲン、シイタケ、タマネギ、ブドウ、リンゴ、鮭、ドジョウなど。
これらの食物は穏やかな性質を持っていますから、毎日食べても体に大きな影響を及ぼすことがありません。食べ物の中で最も多いのも、この性質の食物です。
夏の暑いときに、温熱性の食べ物を食べ過ぎると、のぼせが出たり、吹き出物が出やすくなったりします。反対に、冬の寒いときに、寒涼性のものを食べ過ぎれば、下痢を起こしたり、冷え性になったりします。
なので、熱い夏に寒涼性のものを食べ、寒い冬に温熱性のものを食べれば、人間の体内の寒熱がいい具合に中和されて、バランスをとることが出来るのです。
これが、中医学的な食物の考え方です。