こんにちは。
新聞の紹介欄を見て、そのタイトルから読んでみたくなった「土と内臓」という名の本。
マイクロバイオーム研究で明かされた人体で驚くべき微生物の働きと、土壌での微生物による豊かな農業とガーデニング。農地と私たちの体内にすむ微生物への、医学、農学による無差別攻撃を疑い、地質学者と生物学者が、微生物研究と人間の歴史を振り返る。微生物理解によって食べ物、医療と私たち自身の体への見方が変わる本。
中医学でいう「脾」とは消化器系のこと。飲食物から生命力をつける役目の「脾」は「後天の本」と呼ばれ、ボクたちの体の健康維持に最も重要な役割を果たしています。
「脾」は五行の「土」に属する臓。生物や鉱物など、万物が帰す土のような豊潤な性質を象徴しています。「脾」の元気は健康の土台であり、基本的な体力、免疫力が養われ、健康な体をつくる中心だと言えます。
そして、ポイントとなるのが「微生物」ということだと思います。
最近よく聞く「腸内細菌叢(腸内フローラ)」。ボクたちの顔が1人1人違うように、腸内に棲みつく腸内フローラも1つとして同じものがありません。多種多様な腸内細菌がいるほうが豊かな腸内フローラであり、安定しています。ボクたちが食べるもので「腸内フローラ」が変わり、そのバランスで高血圧や糖尿病、肝臓病などのリスクが分かると言います。
ボクたちの人体内部に棲む微生物群は、敵の撃退を助けることから、人間の健康維持に役立つ代謝副産物の供給まで、数知れない役割を果たしています。血液中にある代謝産物の1/3までもを作り出すのだそうです。「彼らが元気なら、ボクたちも元気」というわけです。
大腸は、消化できないものを集めて溜めておくしか能のない、つまらないゴミ箱などでは全くない、それどころか、このあまりにも愛されることのない場所は、発酵細菌が活躍する「ゴミを黄金に変える」場所なのです。
ただし、大腸の細菌が未消化、あるいは半消化の動物性タンパク質に出会うと、細菌は腐敗に切り替える。タンパク質腐敗の細菌性副産物を慢性的に浴びた大腸細胞は、長年かけて酷く傷つけられるわけです。大腸がんが人生の後半に発生し、タンパク質の腐敗が起きる大腸の下部で主にできる理由だと考えられています。
この本で述べられていること–
コッホやパスツールらによる病原体の発見以来、長い間微生物は主に撲滅すべき病気の原因とされてきたし、この見方は今も根強く残っています。病原体としての微生物という考え(細菌論)に基づいて、様々なワクチンや抗生物質が作られ、お陰で多くの命が救われたことも確かです。しかし抗生物質の乱用は薬剤耐性菌を生み、また体内の微生物相を改変して免疫系を乱して、慢性疾患の原因になっていると言います。
同じことは土壌でも起こっている…ということ。人類は有機物と土壌の肥沃度の関係に直感的に直感的に気付き、農地に堆肥や作物残さ(稲わら、もみ殻、剪定枝など)を与えてきました。科学者が有機物に含まれる栄養分は植物の成長に寄与していないことを発見すると、化学肥料がそれにとって代わりました。当初、化学肥料の使用で爆発的に収穫が増大したが、やがて収量は低下し、病気や害虫に悩まされるようになったのだとか。実は土壌中の有機物は植物そのものではなく土壌生物の栄養となり、こうした生物が栄養の取り込みを助けて、害虫を予防していたからです。
根と腸。いずれの場所でも、微生物の集団が宿主の生存に欠かせない2つの要素「食物を手に入れること」「敵から身を守ること」を助けているということです。
植物食を中心にすれば、胃腸の負担は軽くなる⇒胃腸の負担が軽くなれば、胃腸が強くなる⇒胃腸が強くなれば、血液がきれいになる⇒血液がきれいになれば、内臓が強くなる⇒内臓が強くなれば、元気になる⇒元気になれば、免疫力が高まる⇒免疫力が高まれば、病気になりにくくなる
食生活を変えて腸内の微生物ガーデニングを意識することが大事というわけですね。