こんにちは。
中医学で考える「腎」は、西洋医学でいう「膀胱-尿-水分代謝」の泌尿器系や「視床下部-脳下垂体-副腎」などの内分泌系だけではなく、成長、発育、生殖、老化に関連し、さらに目、耳、骨、脳などとも深く関係しており、生命の根源を支えるものです。
「腎」は父親と母親からもらった命の元である「先天の精」が詰まっているもの。植物のエネルギーはすべて種に集約されているように、人の成長や発育、老化に深く関わっている臓器であると言いました。
生命の根源を支える「腎」ですが、少し細かく見ていきたいと思います。
1:水分代謝をコントロールする
胃や腸から吸収した水分は全身を巡り、最終的に「腎」に送られます。一度使用された水分は「腎」でろ過されたあとに再利用され、本当に不要な分だけを尿として膀胱に送り、排泄されます。
「腎」は1日に約180Lもの水分を処理しているので、「腎」の働きが低下すると排尿困難や浮腫み、あるいは反対に頻尿・夜間多尿などが現れるようになります。
「腎」の働きが活発ならば水分代謝も良く、瑞々しさを発揮できますが、水分を効率良く使うことができなくなると肌が乾燥して、ツヤやハリがなくなり、シワも多くなります。
2:成長・発育・生殖を主る
乳幼児で「腎精」が不足すると体や脳の発育が遅れ、立つ、歩く、髪の毛、歯、話すの5つが遅い「五遅」、頭、首、手足、筋肉、口の5ヶ所が軟弱な「五軟」が起こります。
また、中医学では女性は7の倍数、男性は8の倍数で成長の節目を迎えます。女性は14歳で初潮が、28歳で最高潮に達し、35歳から老化が、男性は16歳で射精が始まり、32歳で最高潮に達し、40歳から老化が始まると考えられています。ただし、現代では栄養状態も良くなり、初潮は早くなり、老化の始まりも昔よりもだいぶ遅くなっている…とも言われています。
もしも「腎」の働きが十分でないと、初潮が遅い、生理不順、不妊症、早々と閉経してしまう、男性不妊症などの生殖機能の異常が現れたり、早く老け込んでしまいます。このような状態で子どもをつくったとして、生まれた子どもは病弱で発育も芳しくない…と考えます。
3:骨や骨髄を丈夫にし、脳の働きを活発にする
更年期を迎えると骨粗鬆症になりやすくなりますが、これも「腎」の機能低下と密接な関係があります。
また中医学には「歯は骨の余り」という言葉もあり、骨の弱い人は歯がぐらついたり、抜けやすくなります。
骨の中には髄が詰まっており、髄は骨を養っています。髄には骨髄と脊髄があり、脊髄は脳とつながり、脳は髄が集まったものとしています。そのため、高齢化が進むにつれて認知症も社会問題になりつつありますが、認知症の予防・改善には「腎精」を補う「補腎」が大事だと中医学では考えています。
このほか「腎の華は髪」「髪は血の余り」とも言われますが、髪のツヤやコシが保たれるためには十分な「腎精」と血液が行き渡る必要があります。「腎」が丈夫で骨髄が元気に血液をつくることができれば、きれいな髪は保てません。
4:耳・目の機能を高める
中医学では、耳や目など外界の様々な情報が入ってくる入口を「竅(あな)」と表現します。中でも「耳は腎の竅」と言い、「腎」と「聴力」の関係を非常に重視しています。聴神経や視神経は直接脳と関係しているので、「腎精」が不足して脳の働きが低下するとすぐに聴力や視力が低下したり、思考、記憶、嗅覚、言語能力などにも影響を与えると考えます。
5:深い呼吸
呼吸を行っているのは「肺」ですが、実は「腎」も関係があります。「肺」によって取り込まれた大気中の清らかな気(清気)は、「腎」の働きにより、さらに深く吸い込まれ、「腎」の気と合わせて真気がつくられます。真気はボクたちが生命活動を行う上で非常に重要な気の1つ。「腎」が弱り、この機能が低下すると、呼吸が浅くなり息を吸い込みにくくなり、深い呼吸ができずにすぐに息切れします。
このように「腎」の働きは多種多様であり、老化と密接な関係がある臓器だと言えます。