こんにちは。

この日曜日、「小郡ふれあいセンター」にて山口中医薬研究会の勉強会がありました。

今回の講師は何(ふ)先生で、テーマは「症例から学ぶ」でした。

テーマの通り、何先生の実際の臨床における5症例をもとに、どのように考え、治療を行っていくか…そのプロセスをお話いただきました。

その中の1つに、「眠れない(睡眠薬を飲んでいる)」「食欲不振」「冷え(背中、お腹、足の裏)」「耳鳴り」…など沢山の症状を訴える60代女性の症例がありました。

年配の方の特徴だそうですが、頭から足先まで全身に症状があります。

この症状をどう分析するか…。何でこのような症状が出るか…この裏には何があるのかを中医学の理論から考えていくわけです。

一般的には、まず「虚」か「実」か。「虚」であれば、何の「虚」なのか。どの内臓の「虚」なのか。

状況から判断し、この方は冷えを訴えているので「陽虚」だと判断できます。

冷えが全身に及んでいるけれど、どこの内臓の冷えなのか…先生はよく「経絡」から考えるとおっしゃいます。

今回注目されたのが「背中が氷を張ったように冷えている」というところ、背中には「督脈(とくみゃく)」が流れています。「膀胱(太陽膀胱経)」「胃(陽明胃経)」「大腸(陽明大腸経)」などは陽の経絡であり、それらを統括しているのが「督脈」というわけです。

同じく、背中を通過している経絡に「太陽膀胱経」がありますが、この経絡が示すことからも、冷えの原因の1つに「腎陽虚」あると考えられます。「太陽膀胱経」は「腎」と関係があるからです。

もう1つお腹の冷えですが、「五七(5×7)陽明脈衰」と中国の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」にある通り、女性は35歳を過ぎた頃から陽明経が衰える…つまり「胃」と「大腸」が衰えてくるわけです。つまり、この方は「腎陽虚」に加え「胃と大腸の陽虚」があるわけです。

●陽虚⇒「冷え」⇒胃と大腸が冷えている⇒「食欲不振」

そして「冷えがあると必ず凝る」「清陽不昇、濁陰不降」とあるのですが、凝ると血流が悪くなる、陽が上昇できないと濁陰(様々な症状)が頭に集中する…とのこと。

●陽虚⇒「冷え」⇒太陽、陽明経絡周囲の筋肉が凝る⇒脳に入る血液の量が減り、脳内酸欠の状態⇒脳内の交感神経が強く働く⇒「不眠」⇔「耳鳴り」

「冷え」⇒「不眠」となったと考えられますが、睡眠が悪くなると「陽虚」がさらに酷くなる…。というのは、夜は「陽」が生まれてくる時間帯だからです。「冷え」と「不眠」はお互いに影響をしているとのこと。

また「不眠」が悪くなると「耳鳴り」が酷くなる、「不眠」と「耳鳴り」もお互いに影響を与えているとのこと。

この方の舌👅を見てみると、「陽虚」の白っぽい舌ではなく紅い色をしている…。単純な「陽虚」の色ではなく、「気陰両虚」の色をしている…。これは女性の特徴だそうで、「男性は陽の体、女性は陰の体」なので、このようになっているとのことで、「陰」と「陽」を同時に考えていく必要があるとのこと。

訴えている症状、舌診などの情報から、中医理論をもとに点と点を結び、その仮説のもとに処方(漢方薬)を考える…。これが「弁証論治(べんしょうろんち)」であり、中医学の根幹であり、「症状(病名)=処方(漢方薬)」ではないというわけです。ここまで考えて処方するから、漢方薬が効くのだと思います。

これは先生の知識と経験によるものが大きいですが、参考になることが多かったです。

何先生、ありがとございました。