こんにちは。

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先日、睡眠薬を飲むと眠れるけれど、極力飲みたくない…という方が来られました。

確かに「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」にも、「高齢者になるほど薬による副作用が起こりやすくなることから、特に慎重な投与を要する薬物」の中に、睡眠薬が挙げられていました。我が国の約20人に1人が使用しているとされる睡眠薬…。その中でも一番多く使われている「ベンゾジアゼピン系」が、「特に慎重に使うべき薬」として挙げられていました。

高齢者の場合、飲んだ直後や夜中に目を覚ましてトイレに行くときなど、ふらついて転倒しやすくなる…というものや、物事を判断したり、記憶する認知機能が低下する…ことがあるようです。そして、長年この薬を使用していると認知症の危険性がわずかに高まる…と書いてあります。

「非ベンゾジアゼピン系」でも、ふらつき・転倒のリスクが起こりやすくなるため、使用は少量にとどめ、長期使用は避けるように…とあります。

上手にコントロールが出来ている場合には睡眠薬は便利なものだと思いますが、「睡眠薬は習慣になるのが怖いし、頭がボーっとするので飲みたくない…」そんな方におススメしたいのが漢方薬の「安神薬(あんじんやく)」です。

安神薬の「神」とは精神のことを指します。つまり、安神薬というのは、精神安定作用のある薬のこと。ボクたちのような現代人の不眠の主な原因というのは、何といっても過度のストレスの積み重ね…。精神を安定させることによって、「心地良い」「深い」眠りを取り戻そう…というのが中医学的な発想です。

・ストレスがたまって心身が疲れる、かえって興奮して眠れなくなる不眠に
ポイントとしては、寝つきが悪い、眠りが浅い、夢をよく見る、イライラする、心臓がドキドキする、のぼせる…などの症状があります。代表的な漢方薬は「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」「シベリア人参」です。

・暴飲暴食タイプ、水分代謝低下タイプの不眠に
ポイントとしては、お酒やしつこい食べ物が好き、舌に黄色い苔がベッタリついている、胸のもたれ、吐き気、めまい、頭が重くつまった感じがする、精神安定剤を長くのんでいる…などの症状があります。代表的な漢方薬は「温胆湯(うんたんとう)」です。

・胃腸が弱いタイプの不眠に
ポイントとしては、食欲不振、軟便、疲労倦怠感、アザができやすい、低血圧、貧血、生理不順、皮膚がカサカサしている…などの症状があります。代表的な漢方薬は「心脾顆粒(しんぴかりゅう)」「帰脾湯(きひとう)」です。

・体液不足タイプの不眠に
ポイントとしては、血圧が高め、動悸、不安感がある、舌の先が赤い、足・腰がダルい、のぼせ、手足がほてる、のどが乾く、寝汗をかきやすい…などの症状があります。代表的な漢方薬は「天王補心丹(てんのうほしんたん)」です。

・精神ストレスなどによって生じるイライラ、興奮のタイプの不眠に
ポイントとしては、イライラが強い、血圧が高め、不安感がある…などの症状があります。代表的な漢方薬は「ミンハオ」「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」です。

それぞれタイプにより適した漢方薬も違ってきますが、これらのタイプも複雑に絡み合っているケースもあるため、これらを併用する場合もあります。