こんにちは。

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先日、東京から中医師の王愛延(おうあいえん)先生を迎えて、山口中医薬研究会の勉強会がありました。

講演の内容は、主に「亀板(クサガメの甲羅)」と「鼈甲(スッポンの甲羅)」の動物生薬についてです…。一般的に、動物生薬の方が植物生薬よりも力(効果)が強い…と言われています。

今回は「亀板」を中心としたお話でした。

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中医学の教科書に載っている「亀板」は、

薬性:甘、寒
帰経:腎、肝、心
効能効果:滋陰潜陽(じいんせんよう)、益腎健骨(えきじんけんこつ)、養血補心(ようけつほしん)

「滋陰潜陽」は上がってくる陽を下に降ろすことで、たとえば、のぼせがある人などに使えます。「益腎健骨」は骨を強くすること…。そして、亀板は「心経」に作用するのが特徴で、「養血補心」は血を補いながら安神(精神安定)作用が期待できるということです。

現代薬理作用では、
①解熱鎮静
②陰虚病証を改善
③免疫力を高める
④DNA合成の双方向的調節
⑤子宮の興奮作用
⑥抗凝血、抗酸欠症
⑦白血球増加作用

また、中国古典である「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」には、「亀板は乳児の泉門を閉じる」とあります。つまり、子どもの成長発育にも使われるようです。

王先生は、中医学の教科書、現代薬理、古典…とあらゆる観点で「亀板」のはたらきを紹介されました。

一方の「鼈甲」は、

薬性:甘、寒、鹹
帰経:腎、肝
効能効果:滋陰潜陽(じいんせんよう)、退熱除蒸(たいねつじょじょう)、軟堅散結(なんけんさんけつ)

「退熱除蒸」は蒸れたような熱を取り除くこと。「軟堅散結」は、しこりなどの硬くなったものを軟らかくすること…。

「亀板」と「鼈甲」を比較した場合、力は「亀板」が上だろう…とのことです。ただ、それぞれに特徴があり、一緒に合わせると、より力を発揮する…ということのようです。

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講演の中でボクが印象的だったのが、有名な老中医である劉渡舟(りゅうとしゅう)先生のお話です。

王先生は「北京中医学院」の出身…。劉先生は、その「北京中医学院」で教授をされていました。

そんな劉先生は「傷寒論(しょうかんろん)」の研究において中国全土でトップの先生…。ボクも、劉先生の訳本である「中国傷寒論解説」を読んだことがあります。

王先生によると、劉先生は基本「小柴胡湯(しょうさいことう)」の加減により、色々な病気を治療されたそうです。加減とは、処方の中の生薬のバランスを変えたり、新しく生薬を足したり、引いたり…することを言います。

王先生は学生のとき、実際に劉先生の診察を見たことがあるそうです。その中で、肝硬変で腹水が溜まった患者さんの印象的な症例を紹介されました。

そのときに処方されたのが「小柴胡湯」に「亀板」と「鼈甲」を加えたものだったそうです…。「鼈甲」の「肝経」に作用する性質と「軟堅散結」で硬くなった肝臓を軟らかくする性質を利用し、「肝」の疎泄(気をスムーズにはたらかせること)の機能が戻るようにもって行く…。疎泄の力が戻ると腹水が自然に減っていく…。腹水がとれるまでの時間はかかるそうですが、その症状は改善していったそうです。

途中、なかなか腹水がとれないと別の病院を受診した人が、「利水剤」を処方してもらい水を抜いたケースがあったそうですが、水を抜いてもすぐにまた溜まり、結局は上手くいかなかったそうです。

そのとき、直接「利水」ばかりすると、かえって「肝陰」を消耗し、結果として肝硬変を悪化させてしまう…と劉先生は説明されたそうです。劉先生の考え方の素晴らしさに触れることができたことに加え、目先のことにとらわれない…という中医学の奥深さを感じました。

このような症例を通しても、「亀板」と「鼈甲」の効果のほどがうかがえます…。

そんな「亀板」のクサガメ、「鼈甲」のスッポンは、中国では高級料理…。どちらも高級ですが、さらにクサガメ料理はスッポン料理の5倍するんだそうです。クサガメは調理が難しく、レストランで食べるものだそうですが、その料理は日本円で数万円なんだとか…。

なので、「亀板」も「鼈甲」も「効果」がすごいですが、やや「高価」でもあります。

王先生、ありがとうございました。