人体の成分として体内に存在する元素は約60種類と言われています。
質量比で最も多いのが酸素65%、次いで炭素18%、水素10%、窒素3%であり、これらの4元素で96%を占めています。ミネラル(無機質)とは、残りの4%にあたる元素のこと。
体液や組織液のミネラルは、いつも一定に保たれているますが、食事から摂取するミネラルの不足や過剰が続くと、体液や組織液のミネラルの「恒常性(ホメオスタシス)」が保てなくなります。
「恒常性」は体温、体液のpHや浸透圧などの、体の内部環境を一定に保つこと。それには残り4%のミネラルが非常に重要になるわけです。
最近では、子どもの発達障害、低体温、成績不振などの原因の1つに「ミネラル不足」があることが言われています。つまりは「食の問題」に問題があるということです。
- 水煮食品の増加
- 食品添加物「リン酸塩」を使った加工食品の増加
- 精製食品、なかでも精製油脂の使用の増加
この3つとも「必須微量ミネラル」が摂れなくなる、栄養問題を引き起こすというものであり、その3つが重なっているのが「現代の食生活」と言われています。
そんな大切な「ミネラルの種類と効能」をまとめてみました。
カルシウム(Ca)は骨の主成分
人の体に最も多く、不足すると骨軟化症などに。
- リン酸カルシウムとして骨や歯をつくる
- 筋肉の収縮
- 神経興奮の抑制
- 血液の凝固
- 酵素の活性化促進および調整
(欠)骨粗鬆症、成長抑制、動脈硬化 /(過)高カルシウム血症
マグネシウム(Mg)は酵素の働きを活発にする
70%が骨や骨格に使われています。細胞が古くなるとMgも減り、欠乏すると心機能に悪影響を及ぼします。
- 骨や骨格の構成成分
- 酵素の補因子、エネルギー代謝反応
- タンパク質の合成
- 神経、筋の興奮性の正常化
(欠)心疾患、筋肉収縮異常、骨や歯の成長障害 /(過)下痢
ナトリウム(Na)が不足すると神経伝達がでない
体内存在率は0.14%、3分の1は骨格や頭骨に存在します。
- 細胞外液の酸・塩基のバランス
- 体液浸透圧の維持
- 神経の伝達物質
- 食欲の増進
(欠)疲労感、低血圧、食欲不振 /(過)むくみ、高血圧
カリウム(K)はそのバランスが心臓の働きと直結している
その役割は細胞内の酸、塩基のバランスで、命に直結するミネラル。血液中のK濃度が正常値の3~4倍になると心臓が止まります。
- 細胞内液の酸・塩基のバランス
- 細胞内液の浸透圧の調整
- 筋収縮および神経の刺激伝達
- リボソーム上でのタンパク質の合成
(欠)むくみ、高血圧、筋肉の痙攣
亜鉛(Zn)は老人も若者並みに元気に
インスリンの貯蔵・放出に関係、欠乏すると味覚異常にも。
- 色々な酵素の働きを助ける
- インスリンの貯蔵と放出作用
- 血漿中のビタミンA濃度の適正化
- 傷の治療と味覚の正常化
- 男性ホルモンづくりに関与
(欠)皮膚炎、味覚障害、成長障害、貧血、下痢
リン(P)は生命に最も近いミネラル
骨はリンとカルシウムでつくられていて、体の中で2番目に多いミネラル。極端に偏食しなければ欠乏することはまずありません。逆に最近では、鉄やカルシウムの吸収を妨げるため、食品添加物に含まれるリンの摂り過ぎが問題になっています。
- カルシウムとともに歯や骨格を形成
- 高エネルギー化合物の形成
- 核酸(DNA、RNA)とATP(アデノシン三リン酸)の主要成分
- 脳、神経、細胞膜の機能維持
- 体液の酸、アルカリの平衡維持
(欠)骨が弱くなる、歯槽膿漏 /(過)腎機能障害、カルシウム吸収低下
体内のリンの量は、尿への排出によってバランスをとっています。なので、腎臓が働かない腎不全の状態では、リンの排泄が上手くいかず、高リン血症に。透析患者など腎臓に疾患がある場合、食事からリン制限を行う必要が。
鉄(Fe)が不足すると貧血に
1日の摂取量は10mg、必要な量だけ体内に吸収されます。
- 全身の細胞に酸素を運ぶ
- 筋肉中に酸素を供給する(ミオグロビン)
- 酸化還元の酵素
- 鉄タンパク質のフェリチン
(欠)貧血、めまい、成長抑制 /(過)鉄の沈着
マンガン(Mn)は色々な内臓をつくり、欠乏すると生殖能力が低下
- 酵素の補因子や尿素などの活発化
- 糖代謝や脂質代謝(細胞膜の老化防止)
- 糖タンパク質合成酵素の活性化と骨構造の正常化
- 生殖機能と中枢神経の正常化
(欠)骨の成長障害、生殖器機能障害
クロム(Cr)は毒にも薬にも
三価クロムは必須ミネラル(薬)、六価クロムは毒物(毒)。三価クロムはインスリンの作用を強化し糖尿病の予防に。
- 耐糖性の正常化に関与(グルコース耐性)インスリンの作用を強化する
- 糖尿病予防、アテローム性動脈硬化症の予防
(欠)糖質、タンパク質の代謝機能低下 /(過)嘔吐、下痢
銅(Cu)は貧血予防にも
- 脂質代謝に関与
- 神経系の髄鞘の維持
- ヘム合成に関与(触媒機能)
- 銅酵素の構成成分
- セルロプラスミンの構成成分(鉄の代謝)
- 銅酵素は毛髪に色をつける
- 銅は細胞に酸素を運ぶ役割がある
(欠)貧血、めまい、髪や皮膚の脱色
セレン(Se)は体の免疫力を高める
活性酸素の抑制作用があります。
- 免疫機構の促進
- ガンの抑制効果
- グルタチオンぺルオキシターゼの補因子
- 病気に対する抵抗力の増進(肝機能維持にはセレンが不可欠)
(欠)老化促進、心疾患 /(過)脱毛、嘔吐、下痢、爪の変化
ヨウ素(I)はホルモンを合成
甲状腺ホルモンの構成成分、欠乏すると脱毛、皮膚異常を起こします。海藻類に多く含まれます。
- 甲状腺ホルモンの構成成分
- 神経細胞内外のナトリウム濃度の調整
(欠)甲状腺腫、成長障害 /(過)甲状腺腫、甲状腺機能低下症