こんにちは。
先日の「日本中医薬研究会 第14回全国大会」での陳志清(ちんしせい)先生の基調講演。「不妊症:成功率を高める周期調節法の極意」というタイトルでお話されました。
従来の「弁証論治」に「月経周期理論」を併せて誕生した「周期調節法」ですが、進化した点として「診察法:基礎体温(BBT)の導入」と「弁証分析:月経周期に伴う気血陰陽の内在的な変化を重視する」…というものです。
「周期調節法」は月経周期を「月経期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」の4期に分けて、それぞれの特徴に応じて薬を使い分け、月経周期を整える方法です。
月経を整える…ということは、必ずしも不妊症の治療だけでなく、女性の体調管理…つまり将来的な病気の予防にもつながる…というわけです。
「弁証論治」のプロセスは「理→法→方→薬」で、「理」(情報収集、情報分析)が大切であると言われます。
特に婦人科の「弁証論治」では、月経、帯下(おりもの)、妊娠、出産、授乳などの問診が欠かせませんし、女性の体は「少血多気(しょうけつたき)」という特徴があるので、「補血(ほけつ)」と「理気(りき)」が常に重視されます。
BBTにも重要な情報が隠されおり、低温期と高温期に大きく分けて考えます。
低温期と高温期を分ける理由は、「性腺軸」のはたらきにあります。
性腺軸とは、
①脳の視床下部から出る性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の刺激により、下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)が出てます。
②そのFSHが卵巣を刺激し卵胞が育ち、卵胞が大きくなると同時にエストロゲン(E)が出て、子宮に作用し子宮内膜が増殖します。
③卵胞が大きくなると排卵し黄体になりますが、そのときに下垂体から黄体化ホルモン(LH)が放出され、排卵を促進すると同時に黄体から黄体ホルモン(P)を出させます。
④Pが子宮に作用し、さらに子宮内膜を厚くフワフワになり、分泌期に入ります。
⑤このとき妊娠しなければ、子宮内膜がPのはたらきで剥がれて月経を迎えます。
これが性腺軸の一連の流れで、「脳から卵巣までのはたらき」です。
この性腺軸のはたらきを頭に入れた上でBBTを見てみると、その裏に隠されている情報を読み解くことができます。そして、そのことを中医学的に分析していくことが必要になります。
中医学では、
・低温期は「陰」の時期、高温期は「陽」の時期
・月経は「陽から陰へ」、排卵は「陰から陽へ」の転化
・「陰」と「陽」の消長と相互転化によって、月経周期ができる
・月経周期は「陰」と「陽」のリズム的な運動の現れである
ということを基本として考えます。
なので、ボクたちは月経周期における「陰陽」の変化を捉えていきながら、対応していく必要があるということです。