こんにちは。

先日、博多で日免研 九州・沖縄部会主催の「学術大会」があり、参加して来ました。

福岡大学薬学部 微生物薬品化学教授の鹿志毛先生による「腸管免疫と全身免疫システム」と題した招待講演と、津山漢方堂薬局の津山先生による「甲状腺について」と題した特別講演でした。

招待講演の講師である鹿志毛先生の専門は微生物学と分子生物学…。DNA二重らせん構造の発見で有名な「ジェームズ・ワトソン博士」が当時、所長を務めたコールド・スプリング・ハーバー研究所(ニューヨーク州ロングアイランド)に博士研究員として従事された経験をお持ちの先生です。

研究テーマは「乳酸菌の有効利用に関する研究」「乳酸菌ゲノム遺伝子の解析と応用」で、腸管免疫を専門に研究されています。

腸管は人体細大の免疫器官であり、その長さは約7m、面積はテニスコートほどあります。また、腸管には神経細胞が10⁸個存在し、脳以外に存在する神経細胞の約半分ほどが存在しているそうです。

腸管には「常在細菌層(生物学的バリア)」「粘液層(分泌物によるバリア)」「上皮細胞(機械的バリア)」「組織(免疫学的バリア)」の生体バリアがあります。

腸管免疫には、危険な病原細菌やウイルスを排除する「積極的応答」と、食品や腸内細菌などの安全なものは排除しない(経口免疫寛容)の「消極的応答」が混在していて、その制御が上手くいかないと「病的状態」になってしまう…と言われます。

小腸にある「パイエル板」を舞台に腸管免疫が行われていて、M細胞を介して色々なものが入ってくるのですが、これにより「樹状細胞」「T細胞」「B細胞」などが動き出し、最終的には「IgA」を主体とした粘膜免疫応答が起こるようです。腸管で上手い具合に「IgA」が刺激されると、感染予防になる…というのです。

また、腸管免疫系の組織や機能の発達に「腸内細菌」が重大な役割を果たしていて、腸内環境を整えることが、免疫を考える上で重要なアプローチとなるわけです。食事、感染、遺伝的な背景、抗生物質などの影響で免疫系のバランスに異常が起こる…と言われています。

免疫系の恒常性の維持において、免疫抑制機能に特化した「制御性T細胞」が重要なのだそうですが、この「制御性T細胞」が「IgA」を介して腸内細菌叢のバランスを制御しているのだそうです。

免疫不全、自己免疫疾患は、「制御性T細胞」が上手く働いていない状態で、腸内細菌叢のバランスが乱れ、病態に影響を及ぼすそうです。逆に言うと、バランスのとれた腸内細菌叢が「制御性T細胞」や「IgA」の産生といった健全な腸管免疫の形成に有効であると考えられます。

腸内細菌が出す「酪酸」が「制御性T細胞」への分化誘導になる…ということで、「酪酸」も今注目されているそうです。

従来の概念とは一見反対で、免疫系は腸内細菌叢を排除するのではなく、代わりに腸内細菌叢のバランスを積極的に維持することで、ボクたちの健康を維持することになるわけです。

免疫の分野は少しずつ変わっているのと、登場人物が多すぎて頭になかなか入って行かないのですが、何回も聴きながら繰り返しやって行くしかないのかな…と思います。

鹿志毛先生、ありがとうございました。