ステロイド剤と漢方薬の併用について
ステロイド剤がアトピー性皮膚炎治療の主流として使われるようになってから40年が経過していますが、「ステロイド剤は使いたくない」という人がほとんどです。「いつか使わないでいられるように…」と思っている方も多いです。それは、長期にわたって使用すればするほど問題も多いことが分かってきたからです。
アトピー性皮膚炎が悪化する大きな原因のひとつは、患部を掻き壊してしまうことです。痒みを抑えるために、ステロイド剤ほど効果のある薬は、残念ながらありません。痒くて仕事や勉強が手につかない、生活に支障が出るほど症状が悪い場合は、ステロイド剤を使わざるを得ないと思います。
いくら漢方薬を一生懸命のんでいただいても、痒みがひどくて掻かずにいられない状態だと、なかなか良くはなりません。また、長くステロイド剤を使ってきた人が漢方薬だけで治そうと急にやめてしまうと、リバウンドを起こして悪化してしまうケースも少なくないです。
アレルギー反応は免疫の過剰反応によって起こるということから、免疫反応を抑制して防ぐという考えのもと作られたのがステロイド剤です。
もともとステロイドは、私たちの体で作られるものです。副腎皮質から分泌されるホルモンなので副腎皮質ホルモンとも言います。生命維持に欠かせない重要なもので、体内の炎症を鎮めるはたらきがあります。
それを外から補っているのがステロイド剤。短期間の使用ならいいんですが、それをいつも外から補っていると、副腎はだんだんと怠けてきます。がんばって作らなくても外から補充されるからです。そうなると、本来のはたらきをしなくなります。使わないものは退化して行きます。怠けることに慣れた副腎は機能が低下をしているので、急にステロイド剤をやめてしまうと、体内の副腎皮質ホルモンが不足して、その反動からリバウンドが起こります。
外に出てくる体の中の熱を、外に出さないように押さえつけていた重石が外れ、一気に噴き出すような状態です。それだけ外から補充するステロイドは強いものです。
リバウンドは主に、体中が真っ赤に腫れ上がり、全身からジュクジュクした汁が噴き出したり、発熱したり、夜も眠れないということが起こることがあります。特に、ステロイド剤の強さ、期間が長い人は注意が必要ですが、弱いステロイド剤でも起こる場合もあります。ステロイド剤を保湿剤と混ぜているものもありますが、かえってステロイド剤の吸収を良くし、効き目が強くなる場合もあります。
ステロイド剤と漢方の両方を上手に使いながら、スキンケアを基本に徐々にステロイド剤を減らしていくことが、負担の少ない方法だと思います。
ステロイド剤を使っている皮膚状態は、見た目が軽微であったりと漢方薬を選ぶときの基準となりにくいです。意外と体の中に強い炎症が潜んでいることが多いです。
漢方薬だけでという固い意志を持つ人は、それでもいいですが、痒いのを我慢するのはかなり大変。まずはステロイド剤を減らしながらお肌をコントロールするということが第1目標となります。